建築家・伊礼智さんが設計した住宅を巡りながら住宅の美しさと心地よさの本質に迫る、新建ハウジング主催「日本の家づくり再考ツアー」第3回が9月25・26日の2日間にわたり行われた。初日は「守谷の家」(茨城県守谷市、2009年竣工)と伊礼さんの自邸「下町の小さな家」(東京都足立区、2024年竣工)を視察。2日目は、伊礼さんが出題した設計課題「庭と呼応する郊外の家」に基づき、“即日設計”に挑んだ。
伊礼さんが常に語る「目を養い、手を練る」という設計者の基本姿勢を体現する同ツアーには、「設計力を磨きたい」と志す設計者ら20人が全国から集まった。性能や意匠の同質化、価格高騰といった環境の中で、注文住宅を主軸とする工務店にとっては“本質的な設計力”の実装が不可欠だ。伊礼さんとじかに対話しながら空間の質やディテールを体感し、その感覚を持ったまま自らの設計に反映する2日間は、参加者にとって貴重な学びの機会となった。
「守谷の家」では、築16年を経て深みを増した素材の風合いを実感。施主であり、これまで伊礼さん設計の住宅を20棟以上施工している自然と住まい研究所代表の中山聡一郎さんが参加者を迎え、住み心地や伊礼建築の魅力を語った。

「守谷の家」では、築後16年を経て深みを増す素材の風合いを間近に見ながら、いまと変わらない伊礼さんの設計哲学を感じ取った
一方、建物密集エリアの旗竿敷地に建てられた伊礼さんの自邸「下町の小さな家」は、“暮らしに必要なだけの広さと機能”を見極めたという伊礼さんが“原点回帰”に位置づける住宅。参加者は、限られた空間の中に生み出された内外のつながりや窓辺から庭の植栽、さらに周囲の樹木へと広がっていく構成、随所に設けられた心地よい居場所などを体感しながら、伊礼さんの言葉に耳を傾けた。

伊礼さんの自邸「下町の小さな家」で美しさと心地よさを体感しながら、伊礼さんの言葉に耳を傾ける参加者たち
視察後の講義では、「小さな心地よい居場所に惹かれて」をテーマに、伊礼さんが自身の設計哲学と手法を解説。旅先などで印象的な建築に出会うと必ずスケッチするという伊礼さんは、「短時間でラフを描き、後から実測して寸法を落とし込む。そうして得た感覚を日々の設計に生かす」と話した。さらに「住宅とは、心地よい小さな居場所の集合体」と語り、設計者自身の経験からにじみ出る“心地よさ”をつなぎあわせていくことで住まいが形づくられていく、と核心を伝えた。
この記事は新建ハウジング11月10日号16面(2025年11月10日発行)に掲載しています。
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