スマートウェルネス住宅等推進調査委員会(委員長=村上周三・住宅・建築SDGs推進センター顧問)は2月13日、「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」第9回報告会で、断熱が居住者の健康に及ぼす影響を“費用対効果”の観点から分析した結果を発表した。高断熱化で居住者の健康状況が改善すると、より少ない費用で健康寿命が延び、特に新築時の高断熱化は8割以上の人にとって“費用対効果が高い”との結果が出たという。
これまでの調査研究で、断熱性の向上による室温の上昇が高血圧や循環器疾患のリスクを低下させることが証明されてきたが、一方で断熱化には費用がかかる。報告者の海塩渉・調査・解析小委員会委員(東京科学大学助教)は、「健康への好影響(医療費削減や健康寿命の延伸)を含めた“費用対効果”が明らかになり、将来的なメリットがあると判断されれば住宅の断熱化が進む」という仮説を、研究の背景として紹介した。
断熱等級2の住宅における、朝の室温15℃での生活を基準に、40歳で断熱性の高い家を新築するシナリオと60歳で断熱改修を行うシナリオで、新築、改修のいずれも、断熱等級4・室温18℃、断熱等級6・室温21℃の2パターンを設定してシミュレーションを行った。
夫婦10万組が、それぞれのシナリオに沿って過ごした場合の生涯(新築は50年間、改修は30年間)にかかる医療費、工事費、暖房費と、効果は健康寿命としてQALY※を算出し、基準との差で費用対効果(1QALYを得るためにかかる金額)を評価した。なお、日本では500万円/QALY以下で費用対効果が高いとされる。
※QALY:Quality-adjusted life yearsの略で「質調整生存年」と訳される。完全に健康な状態を1、 死亡を0としてQOL(生活の質)を数値化し、生存した年数をかけて計算する
性能高いほど費用対効果高く 改修は工事費が課題
新築のシナリオでは、等級4・18℃の場合、生涯費用は基準プラス26万円で、健康寿命は0.31QALY上昇。基準からの増額分の費用対効果は、1QALYあたり84万円となった。等級6・21℃になると・・・
この記事は新建ハウジング2月28日号1面(2025年2月28日発行)に掲載しています。
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