断熱等級6・7の新設、4月の省エネ基準適合義務化といった流れも受けながら、地域工務店による高性能住宅への取り組みは広がる。そんな中、ドイツ・パッシブハウス研究所が規定する性能基準を満たす、世界レベルの高性能住宅とも言える「パッシブハウス」の認定物件が国内で増えている。認定パッシブハウスの設計実績が豊富で、PHJエコハウス・アワードで最高賞を受賞。一方で認定パッシブハウスデザイナーとして、工務店によるパッシブハウス認定のサポートも行う建築家の鎌倉寿さん(鎌倉寿建築設計室代表)に、パッシブハウスの現状や今後の見通しについて聞いた。
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建築家 鎌倉 寿 さん 鎌倉寿建築設計室[愛知県豊田市] |
profile 1962年、岐阜県下呂市生まれ。1996年、鎌倉寿建築設計室開設。2021年、認定パッシブハウスデザイナー(ドイツ・パッシブハウス研究所認定国際資格)取得。2024年、京都芸術大学院・芸術環境専攻建築デザイン分野修了(芸術修士号取得/堀部安嗣スタジオ在籍)。PHJエコハウス・スアワード2020大賞「豊田パッシブハウス」、日本エコハウス大賞2022優秀賞「静岡パッシブハウス」、同2024グランプリ「岩村パッシブハウス」など受賞多数。 |
―なぜ国内でパッシブハウスの認定件数が増えているのか。
パッシブハウス・ジャパン(PHJ)代表理事の森みわさん(キーアーキテクツ代表)がパッシブハウスの認定者、PHJが認定機関になり、工務店などの認定申請をサポートするコンサルタントも増えた(現在、国内で10人ほど)。なによりも日本語で認定申請できるようになったことから、ここ数年で認定申請のハードルは大きく下がっている。実際に、ここ1~2年で一気に認定パッシブハウスが増えている印象だ。PHJ設立から昨年までの十数年間で国内の認定物件は累積で100棟ほどだったが、2025年は認定をサポートするコンサルタントのキャパにもよるが、1年間で数十件が認定される可能性もある。設計・施工から認定申請まで自らが手がける工務店も増えており、今後も加速度的に広がるのではないか。
PHPPは 「実測値を裏切らない」
―工務店がパッシブハウスに取り組む意義は。
個人的に、つくり手にとってたいへん有意義だと感じているのは、ドイツ・パッシブハウス研究所が開発したExcelベースのエネルギーシミュレーションソフト「PHPP(パッシブハウス・プランニング・パッケージ)」を活用すること。熱橋も含めて建物の外皮性能(断熱構成)や日射取得状況を加味しながら、エネルギー収支計算(冷暖房、換気、給湯、照明、その他補助電力)を、かなり正確にシミュレーションできる。
これまでの経験から、PHPPによる計算は「実測値を裏切らない」と自信を持って言える。つまりは・・・
この記事は新建ハウジング2月10日号4面(2025年2月10日発行)に掲載しています。
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