東海・東南海・南海地震が連動して起きる、いわゆる「南海トラフ巨大地震」について、国の中央防災会議の対策検討ワーキングチームは8月29日、同地震の被害想定を公表した。建物被害のうち揺れによる全壊数は、最大で震源域が陸側に寄ったケースの134万6000棟。液状化による全壊数は陸側ケースで約13万4000棟。人的被害は最も被害が大きくなる冬・深夜の東海地方が大きく被災するケースで約32万3000人といずれも甚大だ。ワーキングチームはあわせて、防災対策による被害軽減効果も公表。今回の公表を受け、国・自治体などが連携して対策を強化していく。
南海トラフ巨大地震は、震度7が想定される地域だけでも約0.4万km2、10県151市町村(前回3月31日公表よりも2減)にわたり、震度6弱以上が想定される地域まで広げると約7.1万km2、21府県292市町村にわたる。津波の被害も広範囲で、津波高の平均値が5m以上と想定される市町村数は124市町村、13都県にも及ぶ。
今回の被害想定の地震動は、モデル検討会で検討された5つの地震動のパターンのうち、「基本ケース」と、揺れによる被害が最大と想定される「陸側ケース」について実施。加えて津波について、同検討会で検討された11ケースのうち、東海・近畿・四国・九州の各地方でそれぞれ大きな被害が想定される4つのケースを組み合わせて被害想定を実施した。
被害想定は以下のとおり。
東海地方が大きく被災するケース
全壊・焼失棟数:95万4000~238万2000棟
死者数:8万~32万3000人
近畿地方が大きく被災するケース
全壊・焼失棟数:95万1000~237万1000棟
死者数:5万~27万5000人
四国地方が大きく被災するケース
全壊・焼失棟数:94万~236万4000棟
死者数:3万2000~22万6000人
九州地方が大きく被災するケース
全壊・焼失棟数:96万5000~238万6000棟
死者数:3万2000~22万9000人
このほかに、都府県別の被害も公表されている。いずれのケースも死者数は数万人から30万人を超える規模を想定。自然災害による被害としては、とてつもなく甚大なものとなっている。
死亡の要因で最も大きいとされているのは、津波によるものだが、建物の倒壊による死者数も、最も少ないケースで1万7000人、最も多いケースでは8万2000人と推計されている。
今回の被害想定の公表では、あわせて防災対策による軽減効果も具体的に示された。例えば、建物の耐震化の推進により、現状79%の耐震化率を100%まで高めると、揺れによる全壊棟数は約62万7000棟(地震動基本ケース・冬・深夜)から約11万8000棟に減り、死者数は約3万8000人(冬・深夜)から約5800人と6分の1にすることができるという。また、家具の転倒や落下防止対策だけでも、実施率を100%まで引き上げることで、現状約3000人(地震動基本ケース・冬・深夜)の死者数を、約900人まで減らすことができるとしている。

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