東日本大震災から半年――。マグニチュード9・0の巨大地震がもたらした「揺れ」による被害の全容が、次第に明らかになってきた。比較的早い段階からいわれていたのは、地震の規模の割に振動被害は少ないということ。だが、地域ごとのデータ分析が進むにつれて、被害は別の顔も見せ始めている。
「東日本大震災は短周期成分が卓越したことで、揺れによる建物被害が総じて少なかったのは事実。しかし地震動特性を地域別に比較すると、地盤条件によって揺れのパワーが大きく異なっている。場所による揺れの違いは大きく、周期1秒の成分は仙台市内だけでも4倍違う。これが被害の差となってはっきりあらわれている」
そう指摘するのは、東北大学災害制御研究センターの源栄正人教授だ。
一般的に木造住宅の被害は、周期1秒付近の地震動がパワーを持って入ってきたときに大きくなる。通称「キラーパルス」。木造住宅の固有周期と重なりやすく、共振が起きやすい。阪神淡路大震災や新潟県中越地震・中越沖地震では、こうした波が多く観測された。
これに対し東日本大震災は、宮城県栗原市で最大震度7、水平最大加速度2700ガルと、前述の巨大地震を上まわる強い揺れを記録。だが、周期は0・3秒以下の小刻みな揺れが卓越した。ごく短い周期の地震動が多かったために、木造住宅を壊したり変形させたりするパワーが乏しかったわけだ。
しかし、場所による揺れの違いに着目すると、そこにはまた別の顔があらわれる。
上のグラフは、東日本大震災の観測記録にもとづき、地震動が建物に及ぼす力を図式化して示したもの。横軸に周期を、縦軸に最大速度応答値(建物にどれだけの速度を与えるか)を取っている。卸町地区や長町地区では、1秒付近の周期成分が、仙台駅前の2倍~4倍に増幅していることが明らかだ。
「今回の地震では、こうした地盤条件による揺れの違いが顕著にあらわれた。建物の耐震性能が全体的に上がっているのは確かだが、それだけでリスクを回避しようという考え方には限界がある。今後は地盤による揺れの増幅を視野に入れ、場所に応じたリスク低減を図っていくことも必要。それが一つ、大きな課題として突きつけられた」と源栄教授は話す。
(新建ハウジング9月30日号に詳細記事)
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