「信州の高原に広がる白樺林の美しい景色を、100年先の子どもたちにも引き継ぎたい」。そんな思いを掲げる信州白樺クラフト製作所(長野県立科町)は6月23日、地元産のシラカバ材を使った無垢フローリングの新製品を発表し、報道関係者向けの内覧会を開いた。同社は今後、きめ細かな木目や光沢のある白く淡い色味が特徴のデザイン性・機能性に優れる国産広葉樹の希少な床材として、工務店や設計事務所などに広くPRしていく方針だ。
内覧会は、製品開発に協力した武重建築設計(長野県佐久市)の築100年以上の古民家をリノベーションした事務所で実施された。1階の打ち合わせスペースの床全体のうちの半分余りに、長さ90㎝・幅10㎝・厚さ1.5㎝のシラカバ無垢材のフローリングを施工。実際の使用イメージが体感できる空間として公開した。
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| シラカバ無垢フローリングを張った床。“主張”が強すぎない白くプレーンな“表情”が空間の上質感を引き立てる(左)。実加工が施されたシラカバ無垢フローリングのサンプル。製造・販売を行う青木屋は、長野県産のカラマツ・スギ・ヒノキなどの構造材から羽目板加工まで豊富な実績を持つ(右) | |
製品の開発過程で、設計者の立場で助言した武重建築設計代表・建築家の武重直人さんは「この製品は傷が付きにくく、広葉樹ならではの高い耐久性を備え、木目が目立たない白くプレーンな“表情”や質感が特徴。最近、顧客から人気が高い北欧家具にもよく合い、上質な空間づくりに有効なアイテムになる」と語る。
武重さんは、できるだけ県産材をメインに用いる地産地消の建築に取り組んでいるが、「これまで県産材の広葉樹フローリングはクリ材ぐらいしかなく、今回のシラカバ材の製品化により、選択肢が増えてデザインの幅も広がる」と評価する。
使用されているシラカバ材は、白樺林が広がる立科町の「白樺高原」エリアで伐採されたもの。植林後30〜40年ほどの直径25cm以上の比較的、真っ直ぐな木を選別した。
信州白樺クラフト製作所が木材を提供し、それを受け製材業の青木屋(長野県佐久市)が製造(乾燥・加工)から販売までを担う。2m材をメインに製造する予定で、幅については15㎝程度まで対応可能という。
信州白樺クラフト製作所の代表・渡部ゆかりさんは「シラカバは寿命が短く、放置すると倒れてしまう。健全な森を保つには適切な管理(間伐と植樹)が欠かせない。フローリングの製品化は、その循環を支える取り組みのひとつ」と思いを語る。
今後は、エンドユーザーに加えて、工務店や設計事務所など住宅・建築業界に向けて情報発信しながら販路の拡大を図る。製品を普及させることで、年間10〜20本の計画的な伐採を継続していきたい考えだ。6月に伐採した今年の分に関しては、10月ごろから製品として出荷される予定。
同社はこれまでにも、シラカバの葉を使ったお茶、枝や樹皮を活用したクラフト雑貨などを商品化してきた。広報の吉田達矢さんは「売れる商品をつくり、収益を森へ還元することで、美しい白樺林の風景を後世に引き継ぐための保全活動を加速させていきたい」と話す。

「信州の美しい白樺林の風景を未来の子どもたちにも見せたい」との思いで活動する信州白樺クラフト製作所の代表の渡部ゆかりさんと広報の吉田達矢さん(右)。左は設計者の視点で製品開発に協力した武重建築設計の武重直人さん
この記事は新建ハウジング7月10日号12面(2025年7月10日発行)に掲載しています。
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