香瑛住研が「100年前のフランスの片田舎の素朴な住宅」をコンセプトとし、素材にこだわり抜いてつくる“アンティークハウス”が人気だ。手しごとをフルに生かして再現する完成度の高い「本物のアンティーク空間」が多くの人の興味を引き、Instagramのフォロワーは2万8000人を超える。「他では、なかなか見つからない」と、遠方(全国)からも家づくりの相談・依頼が舞い込む。【編集部 関卓実】
同社が提供するのは、アンティークハウスのオリジナルブランド「ANTiQ(アンティキュー)」。もともと使い込むほどに味わいや価値を増すアンティークなものが好きで、フランス南部の自然が豊かな地方に残る古い素朴な住宅のたたずまいに惚れ込んだ社長の野口博史さんが、フランスの建築様式や歴史・文化、暮らしに関する現地出版の書籍を読みあさって研究を重ね、実際にフランスを訪れて建物の雰囲気も体感するなどして商品化した。
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本社兼アンティークハウス・オリジナルブランド「ANTiQ」モデルハウス。室内ドアやシャンデリア、ステンドグラスなど一点もののアンティーク製品と特注生産のオリジナル建材を組み合わせながら「本物のアンティーク空間」を生み出す。手しごとによる加工で表面を仕上げる梁・桁組やコテ跡を残して塗る漆喰壁、フレンチヘリンボーンで張った本チークの床など細部までこだわり抜いている |
外観は、切妻屋根に総二階の「素朴だけれど、普遍的な美しさを宿すフォルム」(野口さん)をベースに、フランスやスペインから輸入されるアーチ瓦と漆喰塗りの壁が標準仕様。室内空間は化学的な接着剤を使用しない漆喰の自然なコテ跡を残して塗った壁と、手加工の質感を出した梁・桁を組み上げあらわしで仕上げる天井などが特徴的だ。
野口さんは「梁や桁はプレカットが終わった段階で工場に行き、自分で丸太はつり機や真鍮のワイヤーブラシを装着したサンダーを使って、わざとらしくならないように表面を加工。時には石で叩いたりして雰囲気を出すこともある」と説明する。
素材にこだわり、手間を惜しまないことが「フェイクではない本物のアンティーク空間を生み出すポイント」と野口さん。床は、張り方が難しいチーク材の「フレンチヘリンボーン」や特注のオークの幅広材(無垢厚張りの突板)で仕上げる。
玄関・室内ドアや照明、ステンドグラスなどは、海外を中心に仕入れたアンティーク製品を豊富にストックしており、LDKなどメインの空間に“一点もの”のアンティーク製品を用いながら、そのほかの場所には特注生産のオリジナルのドアや既製品を組み合わせる。
コストを抑えながら上質なアンティーク空間を
野口さんは「全てにアンティークなものを採用するとコストがかさむうえ、空間のバランスを整えるのがかえって難しい」とする。できるだけコストを抑えつつ、上質なアンティーク空間を実現するのも同社のこだわりだ。
そのほかキッチンや洗面台なども、空間の統一感を踏まえながら、扉の表面材に古材を用いるなどして造作する。ドアノブや引き出しのつまみといった真鍮製品や、シンプルなカーテンレールなどについても、「既製品ではなかなか良いものが見つからない」ため、オリジナルの特注品を用いるという。
野口さんいわく「空間の質感(本物感)の決め手はディテールにある」。昔の家は・・・
この記事は新建ハウジング5月20日号6面(2025年5月20日発行)に掲載しています。
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