断熱等級6超、耐震等級3(許容応力度計算)、長期優良住宅認定を標準仕様とするキクザワは、性能を中心に住宅のハード面での“同質化”が加速し、同時に家づくりのさまざまな場面においてもAI活用が本格化していく時代の到来を見据えて、“人”に焦点を当てた経営改革やブランディング戦略を推進する。
同社専務の菊澤章太郎さん(34歳)が、社長で父の里志さんから全権を任された格好で、改革の陣頭指揮を執る。人を基軸とする戦略のカギとなる、接客からプラン・設計、現場管理、引き渡し後のアフターまで担う同社独自の「一貫担当」や、精度の高い施工を支える「社員大工」の採用・育成を強化しながら、働きやすい環境の整備にも力を注ぐ。【編集部 関卓実】
![]() |
![]() |
![]() |
一貫担当が家づくりの最初から最後まで施主に寄り添い、フルオーダーメイドでつくるキクザワの住宅事例。断熱・耐震といった性能やデザイン性、北海道産の木材など自然素材の活用と全方位に優れる。ハイレベルな標準仕様のハードは「当たり前の前提条件」としながら、“人”にフォーカスしたブランディング戦略を推し進める |
同社は、ツーバイフォー工法を中心に在来軸組工法も手がけながら、全棟長期優良住宅で、耐震性能は許容応力度計算による耐震等級3。断熱性能については断熱等級7と6の間のUA値0.24W/㎡K以下が必須で、2024年の実績値では0.15~0.23。C値0.5㎠/㎡以下を保証値とする気密性能の同年の実績値は0.12~0.28となっており、高いレベルの躯体性能を標準仕様としている。
性能に加えてデザイン性の高さや、北海道産材を含む無垢の木を中心とする自然素材の活用といった点も特徴とし、商圏(車で1時間程度のエリア)内でブランドが浸透。木造の大手ハウスメーカーを主な競合相手とする4000万円オーバーの高価格帯市場で、一定のポジションを獲得し、現状では安定的な受注基盤を築いている。
性能に“成熟”の感も ハードの差別化が難しく
ただ、こうした状況のなか、同社で組織マネジメントや働き方・経営改革の推進、ブランディング戦略の構築などの旗振り役を担う専務の菊澤章太郎さんは、超高齢化社会における新築住宅市場の縮小も視野に入れつつ、「法改正に伴う性能の底上げや情報の拡散、浸透によるユーザーのリテラシーの向上などにより、住宅の“同質化”が急速に進んでいる。特に寒冷地で断熱・気密の先進地でもある北海道では、性能は“成熟”した感もあり、さらに本格的な“AI時代”の到来を考慮すると、デザインや間取り、動線なども含むハード(器としての住宅)そのものがブランドの核や差別化の要素にならなくなってくる」と危機感を交えて先を見通す。
菊澤さんは、そうした“やがて訪れる未来”を想定したうえで・・・
この記事は新建ハウジング5月10日号2・3面(2025年5月10日発行)に掲載しています。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。