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【特集】専門家・団体リーダーに聞く 「あり方検討会&たたき台」の評価と脱炭素施策~リノベーション協議会

集合住宅の省エネリノベーション普及が家庭部門の大幅省エネに

リノベーションは最も成長が期待できる分野。学校・市営住宅・町営住宅の省エネ改修を呼び水に

齊藤克也氏(一般社団法人リノベーション協議会 理事) 

 
新建ハウジングでは、3省合同で開催されている「あり方検討会」(脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会)をうけてキーマンへの公開取材を続けている。このほど、専門家やこれまで住宅の省エネ・高性能化に取り組んできた団体のリーダーに、検討会の第3回で国交省が提示した「たたき台」の評価・感想や、今後の住宅分野における脱炭素施策への私見を寄稿いただき、検討会の竹内昌義委員に活用いただくとともに、新建ハウジングDIGITALで全文を公開する。
ここでは一般社団法人リノベーション協議会理事・齊藤克也氏の寄稿を紹介する。

 

1.あり方検討会・「たたき台」について:改修支援策はG1以上に。
買取再販事業者への支援拡充が必要

●「委員からの意見」に対して

「既存改修について国民の意識を高める上でも公共建築物から進めるべき」
 →賛成ですが、スイスのように学校、市営住宅や町営住宅などから始めるべきだと思います。

「断熱性能・耐震性能も低いものは建て替えを促進し、比較的新しいもので断熱性能が低いものは断熱改修に支援すべき」
 →建て替えに要する費用が改修費用より低コストとなる場合は建て替えを促進し、比較的新しいもので断熱性能が低いものは断熱改修を支援すべき。このようにはっきりと築年数で定義するほうが良いのではと思います。

●「取り組みの方向性」に対して

全体的に賛成ですが、以下の記述に対してコメントします。
「リノベーションに対する断熱性能の規定を作る事が大切」
 →新築ばかりが数値規定の話になるが、支援するにしても最低HEAT20・G1以上のレベルにすべき。

「買取再販業者向けの支援の拡充」
 →ここを拡充しなければ普及しない。

また、「自治体等との連携」に対しても具体的な内容が不可欠だと思います。

 

2.省エネ基準の提案:まずG1、2030年ごろにG2へ

当初はHEAT20・G1以上のレベルにすべき。2030年ごろにはHEAT20・G2以上にすべき。

 

3.既存住宅の省エネ・脱炭素化について:ボトルネックをつぶす技術開発・標準化の普及、性能評価ツールの開発を

我が国では新築住宅の市場が縮小傾向にある一方で、既存住宅改修の市場の拡大が予想されている。
[図-1]に我が国における既存住宅の年度別建設戸数を示しているが、既存住宅の総数の内約3分の2が築20年以上となる平成12年よりも前に建設されている。
このことからも今後改修の市場は有望であり、特に集合(共同)住宅では、戸建住宅よりも住み手が変更となることが多く、住み手が変更となる際にリノベーションを行うことが可能であるため、建築分野では最も成長が期待できる市場であるといえよう。

[図-1]我が国における既存住宅の年度別建設戸

一方、既存住宅においては省エネ基準の変遷から、古い建物ほど省エネ化(主に高断熱化)が進んでいないが、上記の平成12年よりも前に建設されている既存住宅は、現行の一つ前の省エネ基準である次世代省エネルギー基準が制定されるよりも前のものとなる。
従って集合住宅のリノベーションを行う際に、断熱・換気・空調のリノベーションを行うことができれば、家庭部門のエネルギー消費量を大幅に削減にできることとなる。

しかしながら、これまでの住宅市場が新築を中心としていた背景から、これまで開発されてきた断熱・換気・空調の省エネルギー技術も新築を対象としたものが多く、これらの技術を既存の集合住宅へと導入する場合に、サイズの違いなどが原因となる収まりの問題が発生し、導入コストが増大することが明らかとなった。

例えば、省エネ改修を行う建物では空調として全館空調エアコンを採用することが快適性、省エネ性、経済性(コスト)などの面から有望であるが、既存の集合住宅においては室内機やダクトを設置する天井裏等のスペースがなく、スペースを確保するための余分な工事が発生することなどが分かった。

また、玄関ドアのようにドアを断熱仕様に取り替えることしか選択肢がなく、玄関ドアの断熱改修だけで数十万円の費用が掛かってしまうこともある。

さらには、我が国においては地域により気候が大きく異なっていることや、建物ごとに仕様が異なるため、地域や建物に応じたリノベーションの標準化を行うことが必要であることが分かった。

上記のようなサイズの違いなどが原因となる収まりの問題による導入コスト増大を解消し、低コストで大きな暖冷房のエネルギー消費量を削減できる省エネリノベーション技術を開発する必要がある。

さらには、気候条件や建物条件に応じた省エネリノベーション技術の標準化を行い、本技術を我が国のあらゆる地域・建物で導入できるようにするとともに、集合住宅用の性能評価ツールを開発し、我が国で説明が義務化される省エネ性能の評価を可能にしたい。

 

一般社団法人リノベーション協議会
リノベーションにかかわるあらゆる事業者が横断的に集まった団体。リノベーションによる既存住宅流通の活性化を促進するために、適合リノベーションの品質基準を定めている。加盟社数:884社

 

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