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【特集】専門家・団体リーダーに聞く 「あり方検討会&たたき台」の評価と脱炭素施策~新住協

数値基準は全廃、見なし仕様基準+ポイント制度への移行を

中小住宅事業者にも理解しやすく、大手との不公平が生じない、施主にも理解しやすい基準が必要

鎌田紀彦氏(⼀般社団法⼈新⽊造住宅技術研究協議会 代表理事)

 
新建ハウジングでは、3省合同で開催されている「あり方検討会」(脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会)をうけてキーマンへの公開取材を続けている。このほど、専門家やこれまで住宅の省エネ・高性能化に取り組んできた団体のリーダーに、検討会の第3回で国交省が提示した「たたき台」の評価・感想や、今後の住宅分野における脱炭素施策への私見を寄稿いただき、検討会の竹内昌義委員に活用いただくとともに、新建ハウジングDIGITALで全文を公開する。
ここでは⼀般社団法⼈新⽊造住宅技術研究協議会代表理事・鎌田紀彦氏の寄稿を紹介する。

 

1.現行省エネ基準の問題点:低い省エネレベルと細かく難解な規定

1999年以来、そのレベルをずっと維持し続けている省エネ基準ですが、その間数回の改訂の中で、2009年の改訂から、基準の解説書が1000ページを超え、内容的にも詳細、難解な内容になり、多くの問題を抱えていると言えます。ここにいくつかを列挙します。

1)1999年以来22年間にわたり、省エネレベルを固定してきたこと。この間欧米諸国は住宅の省エネレベルの⼤幅な向上を果たしてきました。⽇本にとっては空⽩の22年でしかありません。

2)その省エネレベルが、低いレベルだったため、その間建設された住宅では、住み⼿が全室暖房かそれに近い⽣活を送りたいという要求が増え続け、その結果暖房エネルギーの増⼤を招いてしまったこと。

3)2013年の改訂で、基準値がQ値からUA値に変更され、いくつかの問題が⽣じています。

[生じている問題例]
・開⼝部のU値基準が極めて低いレベルの5〜7地域で、断熱サッシを採⽤したマージンで躯体の断熱を極めて薄くする住宅が建設され、その住宅の居住性が問題になった例が発⽣しています。開⼝部と躯体の断熱厚をバーターできる基準は多少問題があります。基準を別にした⽅が良いと考えます。

・UA値が、太陽熱を効率的に取り込んだり、熱交換換気を採⽤したりという、極めて省エネに有効な⼿法を反映しないため、省エネ本来の⽬的である、暖冷房エネルギーの削減効果を⽰しているとは限りません。それにもかかわらず、ZEHの補助⾦対象の選択にUA値が使われるなどして、UA値が広く省エネ性能の指標として使われるようになってしまったこと。

・UA値や、⽇射取得率の計算ルールが極めて細かく規定されていて、この計算を⼩さな⼯務店、設計事務所が⾏うことはとても困難です。これを救済すべく⾊々な簡易計算法が提供されていますが、それを使うと常に不利な計算となり、詳細な計算書を提出できる⼤⼿ハウスメーカーとの間に格差が⽣まれます。

4)省エネ基準の解説が膨⼤、難解で、完全に理解するには、研究者レベルが要求されます。ユーザーには全く理解できません。そもそも、省エネ基準で重要なことは、建設される住宅の消費エネルギーが実質的に削減されることであるはずです。基準のための詳細な計算式や数値を、ユーザーや設計施⼯にあたる事業者が理解する必要は本来ないわけで、詳細な仕様基準の⽅が義務化を前提に考えると必要だと考えます。

5)住宅の消費エネルギー計算プログラムに関する問題点
・住宅の冷暖房の⽅式が、全室冷暖房、居室のみの連続暖房、間欠暖房と細かく区分されていますが、本来このプログラムは住宅の設備系の省エネ性能を評価するプログラムで、居住者がどのような冷暖房⽅式をとるかには関係しないはずです。このプログラムで間欠暖房を選択し、住宅の消費エネルギーが⼩さいことを表⽰した場合、居住者が、全室暖冷房を採⽤すると、消費エネルギーが⼤幅に増⼤する結果を⽣じてしまいます。負荷の最⼤値を⽰す全室暖冷房⼀本にすべきでしょう。逆に全室暖房を選択し、居住者が間欠暖房の⽣活をした場合、実際の消費エネルギーは少なくなるのですから問題はありません

・関連して、現在多くの省エネ住宅が⽬指す全室暖房または殆どそれに近い暖房を、ストーブやエアコン1〜2台で実現する⽅式をとりつつあります。最近では冷房でも東京以⻄では全室冷房が関⼼を集めています。現状のプログラムではダクトエアコンによる全室冷暖房しか選択肢がなく、個別エアコンやストーブを選ぶと、必ず間欠暖房になってしまいます。やむなく、ダクトエアコン⽅式を選択すると、その暖冷房エネルギーの計算結果は、極めて⼤きな数値になります。我々が使っている、暖冷房エネルギー計算プログラム「QPEX」に⽐べて、⾊々な性能レベルの住宅で1.5倍〜2倍にもなり、とても使えません。QPEXの計算結果と実際の住宅の調査結果はかなり良く合っています。特に冷房エネルギーの計算結果に差が⼤きく、春秋を除いた冷房が必ず必要になる期間に限定すべきでしょう。

>>>次ページ「2.省エネ基準の提案:見なし仕様基準+ポイント制度で適合&上位誘導を容易に」

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