日本住環境
住宅における「気密」の重要性を40年近く前から訴えつづけてきた日本住環境(東京都台東区)。高性能化が進む住宅業界にあって、気密に関してはまだまだ認識不足の点が多いという。そんな気密を「日本の家づくりの“常識”にしたい」と話す同社・釣本篤司さんに想いを聞いた。
釣本 篤司 氏
日本住環境
広報部プロジェクトマネージャー
大半が気密を思い違いしている
「断熱材さえ厚くすれば自然と気密性能は確保できる」だとか「日本の住まいは“高断熱・中気密”くらいがちょうどいい」といった声をいまだによく聞きます。また、断熱材の外側に気密シートを張っているZEHビルダーさんの現場をたびたび目にすることも。気密を「一部のマニア向けの技術」ととらえて自社の家づくりには関係ないと考える人も少なくありません。
でも、これらはすべて間違い、思い違いです。こと気密に関しては、知っているようで正しく知られていないことがたくさんあります。
断熱等級4でも寒い家?
全国の住宅現場を巡っていると、四国や九州のような温暖とされる地域ほど、過酷な温熱環境の住まいが多いことに気づかされます。
たとえば、プロ野球の春季キャンプで盛り上がる2月下旬の宮崎県宮崎市。ある住宅の温度を9:30に測ったところ、寝室は外気温7.5℃とほとんど変わらない8℃でした。
意外に思うでしょうが、この家の断熱性能は最高等級の4。最新の技術と材料によってきちんと断熱化されているにも関わらず10℃を下回るのは、C値3.9cm2/m2という気密性能の低さが原因です。
この一例からわかるように、どれだけ厚い断熱材を入れても、すき間があったら意味がありません。東京大学大学院・前真之准教授の「気密なき断熱は無力なり」の言葉の通りです。
健康も省エネも換気も気密次第
気密をきちんと確保するとしないとでは、とくに「結露」「健康」「省エネ」「換気」の4つが大きく変わってきます。
すき間がある住宅は結露しやすく、寒暖差が大きいためにヒートショックの可能性が高くなり、エアコンや24時間換気が思うように効きません。
仮に換気に着目してみると、C値5.0cm2/m2の住宅の場合、給気口からは約17%しか給気されず、残りの約83%はすき間風という計算になります。よく「第三種換気は冬寒くて使えない」などと言われますが、気密処理をきちんと行っていればそんな事態にはなりません。その証拠に、当社の第三種換気システム「ルフロ」は日本一寒いとされる北海道旭川市で一番売れています。
大事なのは断熱だけじゃない
日本の家づくりは、国主導の省エネ施策により、高断熱だけを追い求める少々かたよった姿で変遷を遂げてきました。けれども本来は、高断熱と高気密はセットで考えるべきもの。断熱レベルだけを上げる家づくりはやはり間違っています。
私たちは、高断熱・高気密に計画換気、冷暖房、小屋裏換気を加えた5要素が住宅には不可欠だと考えています。これらの5つがバランスよく機能して初めて、快適で健康で省エネで長持ちする家になるからです。
「気密が大事」を説いて40年
じつは、私たちからしたら新しい話は1つもありません。1980年に木造住宅用気密シート「ダンシーツ」を発売して以来38年間、コツコツとまじめに根気よく、「気密が大事」だと言いつづけてきたのですから。
うれしいことに高気密化の重要性を正しく理解する工務店さんは着実に増えており、「日本住環境の“気密簡素化部材”を使いたい」と言っていただく機会がかなり増えました。新設着工戸数は落ちていますが、おかげさまで当社の販売シェアは毎年伸びています。
住宅にとって気密がいかに大事かがわかると、だれが施工しても確実に気密がとれる成形品は不可欠なアイテム。これを使うことで“気密の平準化”が可能になるからです。
業界の“常識”を変えたい
本当に大事なことは目に見えません。壁や床、コンセントボックスに隠れてしまう気密処理は、その最たるものかもしれません。だからこそ私たちは、「気密は大事」だと言いつづけます。自社製品を売りたいがためではなく、目に見えない大事なことをみなさんに知ってもらい、豊かで快適な住環境をともにつくりたいと真剣に考えているからです。
これを実現するために、気密に関する工務店・設計事務所向けセミナーを全国各地で年100回以上開催。支店・営業所単位では、「現場測定研修会」を随時実施しています。実際の現場を使って気密・流量測定を行い、すき間を発見し、職方さんに気密部材の正しい選び方・使い方・納め方を知ってもらうことで、意識・技術の向上をともにめざします。
また、千葉県松戸市に開設した「NJK研修・開発研究所」では、モックアップ(原寸大模型)を使った体感型の研修もご用意しています。
日本の家づくりではまだ、スタンダードな存在になり切れていない気密。それが“常識”になる日まで、私たちにはやることがたくさんあります。
住宅に必要な性能は「高断熱」「高気密」「計画換気」「冷暖房」「小屋裏換気」の5要素。
気密施工の平準化が図れる“気密簡素化部材”。配管用気密パッキン「ドームパッキン」、気密コンセントカバー「バリアーボックス」、CD管/PF管の気密防水処理部材「ゴームパッキン」が売れ筋。
「現場測定研修会」では、気密・流量測定やフォグ試験を行ってすき間や施工の問題点を特定。改善策も提案する。
松戸市にある「NJK研修・開発研究所」では体感型研修会を実施。モックアップを使って気密シート・断熱材の施工方法・納まりなどが学べる。防風雨試験装置もある。
東京都台東区秋葉原1-1秋葉原ビジネスセンター9F
TEL:03-5289-3302 FAX:03-5289-3307
http://www.njkk.co.jp
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